てんかんの薬剤

てんかんの薬剤

てんかんの薬剤のことを抗てんかん薬と言います。
いろいろと種類が多いので、実際に臨床で使うことの多い薬に関して自分の考え方を説明をしたいと思います。

てんかんは脳の電気活動が異常興奮する疾患であり、必然的に抗てんかん薬は脳の電気活動を抑える作用が求められます。
そのため副作用として、眠気とふらつき、ボーとするなどの副作用がほぼすべての薬で認められます。
変わった副作用として、興奮や怒りっぽさなどもあります。
脳機能を抑える効果が求められる抗てんかん薬で興奮などの副作用が出るのはおかしいと思われるかもしれませんが、おそらく、脳機能の中でも理性を抑えてしまうため、興奮しやすくなるのではないかと思っています。
その他、肝機能障害、血球減少、アレルギー反応(皮疹)もよく見られる副作用です。
皮疹は重篤化することも多く、出現した際は速やかに抗てんかん薬を中止し、変更しなければなりません。

最近は新規抗てんかん薬と呼ばれる、新しい抗てんかん薬が増えています。
副作用が従来のと比べると少なく、圧倒的に使いやすいです。
てんかんと診断した場合、ほぼ下記に書いてある、イーケプラやビムパットで開始することが一般的と思います。
眠気やふらつきの副作用は減ってはいますが、高齢者では新規抗てんかん薬でも眠気を訴えられる方もおり、少量から開始することもあります。
特にイーケプラはてんかんを抑える作用が強く、副作用が少なめのため、第一選択薬として使われることが多くなっています。
ただ一つの難点としては怒りっぽくなる人が時折みられることです。

今のご時世、ジェネリックの薬品が多くなってきましたが、抗てんかん薬に関してはあまりジェネリックは使われていません。
ジェネリックの薬品は有効成分の量は先発品の薬剤と基本的に同等とされていますが、その他の成分が異なっています。
そもそも薬は5mgとか、100mgと書いてありますが、その量だと、微量すぎて、錠剤などを作ることができません。そのため、でんぷんや乳糖などをまぜて、錠剤やカプセル剤として精製しているのです。
その他の成分が違うことで体内の代謝や吸収が異なることがあり、ジェネリック薬品が製造販売の承認を得る際の条件が、体内での吸収や分解などの過程が、先発品の80-125%  程度とされています。
すなわち先発品と比べて20%程の差異があっても許されるとされています。
通常の薬剤であればそれほど問題はない(?)のかもしれませんが、抗てんかん薬は有効な薬の量の幅が狭く、少量の変化で病状や副作用の変化が出ることがあるとされています。
そのためてんかん学会などはジェネリックの使用を推奨しておらず、抗てんかん薬に関してはジェネリックを使わない風潮があるのです。

  • デパケン:以前は最も使われた薬剤であり、全般性てんかんには第一選択となりますが、部分てんかんにもよく使われていました。最近はイーケプラに変わりつつあります。また片頭痛にもよく使われます。副作用としては、高アンモニア血症やカルンチン欠乏症などがあります。
  • テグレトール:部分てんかんには第一選択となります。血球減少や肝機能障害、眠気などの副作用が比較的出やすく、イーケプラやビムパットに変わられることも多くなりましたが、抗てんかん薬のなかでは効き目が強い印象があります。
  • アレビアチン:けいれん発作が起きているときに、点滴として使われることはありますが、これも昔の薬で新規に出すことは減ってきています。長期に内服すると小脳萎縮によるふらつきや歯肉増殖などの変わった副作用が出ることがあります。
  • フェノバール:注射薬はアルコール離脱症状によるけいれんによく使われていましたし、最近新しく静注薬がでているので、注射では使われることがありますが、内服薬はあまり使われることが減ってきています。眠気の副作用が出やすい印象があります。
  • エクセグラン:抗てんかん薬のなかでは効果と副作用でバランスの取れた薬の印象ですが、イーケプラのような新規の抗てんかん薬が出てきてからはあまり使われなくなってきている印象です。少量では抗パーキンソン薬のトレリーフとして使われています。
  • リボトリール・ランドセン:抗てんかん作用もありますが、不随意運動を止める作用の方が有名かもしれません。本態性振戦(年齢・遺伝性による震え)でもよく使いますし、ミオクローヌス(一瞬のぴくっとする動き)、レム睡眠行動異常(眠りながら大声で叫び、暴れる)、ムズムズ足症候群(夕方になると足がムズムズして不快に感じ、とても気になる)などに使います。欧米では抗不安薬としても使われていますし、何らかの末梢神経障害でのしびれ感の緩和などにも使われています。眠気とふらつき以外の副作用が少なく、処方しやすい薬です。
  • マイスタン:眠気の副作用があり、その他の副作用はあまりありません。てんかんの人が不眠を訴えたら追加で処方することもあります。
  • トピナ:海外では片頭痛の治療薬としても使われています。副作用として腎結石や体重減少が特徴的です。併用療法が適しているとされています。
  • ガバペン:抗てんかん薬特有の眠気が少なく、高齢者に使いやすい抗てんかん薬です。効果は若干弱めの印象があります。
  • フィコンパ:眠気が起こりやすいため、眠前に投与する薬です。抗てんかん薬はもちろんのこと、ミオクローヌスと呼ばれる不随意運動(一瞬のピクッとする動き)に対する作用もあり、脳症後などでミオクローヌスを起こすようなてんかん発作によく使われるようになりました。
  • イーケプラ:おそらく現在もっとも処方されることの多い薬剤と思います。副作用が少なく、てんかんを止める作用がある程度あります。比較的新しい薬ですが、これまでの薬剤とは違い、脳の神経細胞の異常な情報伝達を阻害します。他の抗てんかん薬と比べると副作用は少ないのですが、特徴的な副作用としては易怒性があり、内服で怒りっぽくなることがあり注意が必要です。
  • ビムパット:こちらも比較的新しい薬です。テグレトールと作用機序は似ており、テグレトールと同等程度の効果があるのですが、テグレトールよりも副作用が少ないとされています。またイーケプラと違い、易怒性の副作用が少ないため、もともと怒りっぽい人などはこちらから使われることも多いです。
  • ラミクタール:抗てんかん作用が比較的強く、眠気の副作用が少ないです。また精神科的な分野でも使われており、躁うつ病でもよく見られます。特殊な頭痛である、SUNCTやSUNAなどでも頭痛予防に使われます。しかし、皮疹が出現する頻度が多く、皮疹も重篤化しやすいとされており、ごく少量から徐々に増量していきます。皮疹さえなければ、眠気が少なく、かなり使い勝手のいい薬と思いますが、処方する際はかなり気を使います。

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